Teacher: Akito INOUE
Course Code: JK11004
「ゲーム」とはなんだろうか。「ゲーム」という概念は「物語」「自由」などと同様に人文学的にも社会科学的にも重要な概念であるにもかかわらず、近年に至るまで「ゲーム」に関わる研究はあまり精緻な議論が進まず、多くの人が興味を持ちながらもホイジンガやカイヨワを参照するところから、議論が更新されない状況が長年続いてきた。
ヴィトゲンシュタインは、定義が難しい概念の典型例の一つとして「シュピール(遊び・ゲーム)」を挙げたが、実際にゲームという概念を捉えるのはかなりの難物である。それゆえに、この概念について理解をすすめようと苦闘することは、社会科学や人文学における重要な諸概念の特質について考える上でも数多くの重要なヒントを含んでいる。
本講義では、ゲームという概念を捉えるための、トピックごとに討議を行っていく。人文的なゲーム研究が授業のベースとはなるが、その都度、関連する諸領域の議論も参照し、学際的な議論を行っていくことになる。
Course Information
Module: Focus 1 – Foundations
CATS Requirements: BA 2nd year or above
Link to course material on PandA.
Day/Period: Wed/1
Location: Lec. 3
Credits: 2
- イントロダクション:ゲームが投げかける問題
「ゲーム」の概念について考えることの射程の広さについて確認する。 - ルールについて(1)
「ミニマム」ノミックを実際に遊んでみて、「ルール」の概念について考える。 - ルールについて(2)
「ゲーム」の概念をルールの同定しようという試みについて紹介する。 - ゲームと自由
ゲームが生じさせている各種の自由に関わる各種の論点を整理する。 - 日常言語としてのゲーム
ゲームが「日常言語」であるということの側面を多面的に整理する。 - 余暇と労働
何かしらの行為がなぜ「労働」や「余暇」のみなされるのかを考える。 - 学習
「ゲーム」の概念を学習の概念から説明しようとする議論の流れを簡単に整理する。 - 二次的現実
いわゆる「非日常」の概念からゲームについて考えととする議論を整理する。 - コミュニケーション
コミニュケーションの理論と「ゲーム」の概念の関係性を確認する。アイデンティティや儀式に関する論点も扱いたい。 - 駆け引きと均衡概念
ゲーム理論などで論点となる主要な概念のいくつかを紹介する。 - 物語とゲームの概念
人が因果関係の把握を行う複数の観点を「ゲーム」「物語」の側面から整理する。 - 依存
「依存」の概念を考える。 - 現象の多層性
「創発」の概念について理解してもらう。 - 循環・相互作用
ゲームを「循環」や「相互作用」として捉える説明を統合的に考える。 - 総括
ゲームに関わる研究全体を改めて概観する。
Course Goals
・社会科学・人文科学に関する重要な概念のいくつかを理解する。
・現代の文化・社会・技術に関する理論的研究の一端を知る。
・ゲームの研究で使われがちな重要な論点を理解する。
Course Schedule and Evaluation
平常点:50%
期末レポート:50%
・平常点は、通常授業での小レポートの提出や授業態度等で総合的に評価する。
・期末レポートの課題は、論文を1つ読んで、その論文に関わる重要な問いを提出してもらうようなものにする予定である。